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ちょっと小説風な自己紹介【コミュ障だった僕とクソセミナー】

 

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「社交不安障害ですね」

 

 

キーッと椅子を回転させてこちらに体を向けると、小太りの医者はぼくに向かってそう告げた。

ぼくは晴れて対人恐怖症患者になれたのだ。

 

対人恐怖症は、医学的には社交不安障害というらしい

 

ぼくは人と話すと手が震える謎の奇病にかかった。

まるで志村けんがコントでやっているお婆さんのようである。

 

なんなんだこれは。

 

心が苦しい。

まるでだれかがぼくの心臓を掴んでるかのように心がキューっとする。

 

「人がこわい」

「人と会いたくない」

 

ぼくはいつしか人が怖くなり、毎日引きこもってオンラインゲームに没頭するようになった。

なにしろバーチャルの世界でのぼくはスーパーヒーローである。

 

リアル世界で輝けなかったぼくは、ゲームの中で理想の自分を演じた。

ギャグを言ってはみんなを笑わせ、バトルでは敵の攻撃を受けて仲間を守るリーダー的存在。

 

みんながぼくを慕ってくれた。

 

しかし現実はどうだ。

仕事ではろくに成果も出せず、人と会話をしようとすれば手が震えて喋れない。

 

コンビニ店員に「あたためますか?」って聞かれて「は、はひっ」と言ってしまうくらいのコミュ障ちゃんになってしまった。

 

 

「クラプ、お前はどう思う?」

会議室にいる同僚たちの視線がぼくに集中する。

 

ぼくは震える手を隠して引きつった表情のまま固まった。

 

頭は真っ白。

ワイドハイターもびっくりするほどの白さだ。

 

もはやなにを聞かれているのかすら分からない。

 

同僚は一斉に「どうしたんだこいつ?」というような表情を浮かべながらぼくをスルーし、何事もなかったかのように元の議題に戻っていった。

 

どうしちまったんだおれは。

だれか助けてくれ。

 

 

幼少期から対人恐怖だった

 

振り返ってみればぼくは幼い頃から人と接するのが苦手だった。

幼稚園から小学校の10年間、ぼくは家の外では全く声を出さないという漫画に出てくるような不思議っ子だった。

 

周りの子供はみんな普通に友達がいて、たとえ先生の話を聞き逃しても友達が教えてくれたりする。

でもぼくは言葉が喋れないから、先生の話を聞き逃した瞬間にこの世の終わりかのような絶望に打ちひしがれることになる。

 

(えっ!?先生いまなんて言ったの!?)

(明日はなにを持ってくるって!?)

 

夜も眠れなくなる瞬間である。

 

次の日、みんなのランドセルにはリコーダーが刺さってた。

奇跡の正解を願って絵具を持っていったぼくの予想は見事に外れ、みんながリコーダーを吹いている横でぼくは棒立ちするハメになった。

 

「神様!ぼくの人生だけ間違えてハードモード選んじゃってない!?」

 

 ・

 ・

 ・

 

そうか。

ぼくは対人恐怖症だったのか。

 

過去の苦い思い出を振り返りながら妙に納得していた。

 

な〜んか他の子とちょっと違うな〜とは思ってたんだよな。

そうかそうか。対人恐怖症ね。

 

まぁでもぼくは寛大な男だ。

普通なら「この対人恐怖野郎!今までよくも俺を苦しめてくれたな!ぶっ殺すぞ!!」とキレるところだが許してやるよ。

 

「どうせお前とは今日でお別れだ!あばよ!!」 

 

病院の帰り道、薬を手にしたぼくは浮かれていた。

今日からぼくの人生はイージーモードだ!

 

腰に手を当ててスキップして帰る勢いでぼくは家に着いた。

 

さっそく薬を飲んでみた。

すると薬の安心感もあってかすごく落ち着く。

 

(おお、これなら普通に人と話せるかも・・)

 

そしてぼくはどんなときも薬を持ち歩くようになった。

 

「こんないいものがあったのか」

「もっと早く病院行っとけばよかった」

 

ぼくは薬に人生を救われた。

 

この薬さえあれば怖いものはない。

勝った・・!

 

U-NEXTでデスノートを読む

 

しかし絶望はすぐに訪れた。

 

薬を飲む。

人と話せる。

 

薬が切れる。

引きこもる。

 

薬を飲む。

人と話せる。

 

薬が切れる。

引きこもる。

 

あれ・・?

 

ぼくはなにか違和感を感じ始めていた。

 

(な〜んか想像してた未来とちょっと違うぞ・・?)

 

ぼくは薬を飲んでればだんだんと対人恐怖症が治るのかと思ってた。

そしてみんなから慕われて、仕事ができて、超絶モテる、まさにゲームの中で演じていた理想のぼくになれるのかと。

 

しかしなんだこれは。

1年以上も薬を飲み続けてるのに、薬が切れたらいつもの自分に戻ってしまう!!

 

U-NEXTでデスノートを読む

 

よくよく振り返ってみれば、薬を飲んでも決して心が晴れることはなかった。

どんよりと重く暗い雨雲がいつも心のどこかに漂っているのだ。

 

そしてぼくはバーチャルの住人に戻った。

 

月額1300円で、仕事の時間以外はずっとゲームしてる。

コスパ良すぎかよ。

 

 

そんな生活を続けて何年か経ったころ、そろそろゲームにも飽きてきてゲーム仲間も引退し始めた。

ぼくの唯一の居場所が崩れ始めたのだ。

 

(唯一の楽しみ、なくなっちゃいそうだな・・)

 

と同時にふと思った。

 

(生きてるの・・つらいな・・)

 

ふと芽生えたこの感情にぼくは怖くなった。

 

リアル世界ではもはや楽しみを見出せない。

唯一の楽しみだったゲームも終わりかけてる。

 

もしこのゲームがなくなったら・・

 

・・ぼくには何が残るんだ・・?

 

(このままではやばいかもしれない・・)

 

ゾッとした。

 

未来が見えない・・

 

 

今まで味わったこともないようなドス黒く重たい恐怖に駆られ、ぼくは対人恐怖症の本を読み漁った。

コミュニケーションの本も読みまくった。

 

しかしなにも変わらない。

ただの1つも変わらなかった。

 

書いてあることが理解できても実践ができないのだ。

人が目の前にくると全ての記憶がリセットされ、真っ白になってしまう。

 

詰んだ。

これが将棋なら盤をひっくり返す寸前だ。

 

もうなにもできることはない・・

 

・・と絶望に打ちひしがれていたぼくの目に、偶然にも同じ悩みを持った人が書いたブログが目に止まった。

投げやりな気持ちのままそれを読んでみると、そこにはこう書いてあった。

 

 

「あるセミナーに参加したら人が怖くなくなった」

 

 

は?

 

 

好んで対人恐怖症になんかなるかよ!!

 

「今までの選択が現状を作っている」

 

このセミナーには散々やられた。

マジで痛いところばかりついてくる。

 

この謎のセミナーによれば、ゲームにハマってるのも、対人恐怖症でさえも、自分で選択しているというのだ!

 

だれが好んで対人恐怖症になんかなるかよ!

志村けんみたいにコントで手をプルプルさせてるわけねーだろ!

 

しかしぼくはなぜこんなにもムキになっているのかよく分からなかった。

違うなら流せばいいだけの話だ。

 

ぼくはこのとき、明らかになにかと戦っていた。

 

「変わりたい俺」vs「変わりたくない俺」である。

 

「変わりたい俺」が地面から一生懸命顔を出そうとしているのを、「変わりたくない俺」が必死に足で踏みつけているのだ。

 

 

お前は何を守ってる?

 

  

「クラプは何を守ってるの?」

 

 

このクソセミナーのせいで「変わりたい俺」が完全に目覚めた!!

 

ヤメロ!!

お前は眠ってろ!!!

 

「変わりたくない俺」が必死で抵抗する。

 

目覚めようとしているのはおそらく本当の自分である。

幼稚園のころにイジメにあったぼくは、喋らなくなることで存在を消して自分を守ったのだ。

 

つまり本当の自分を隠した。

 

 

「ぼく、対人恐怖症なんです」

「ふーんそうなんだ。」

「だからうまく話せないんです」

「なるほどね」

「で?」

「はい?」

「対人恐怖症になることで」

 

 

「クラプは何を守ってるの?」

 

 

え?

 

意味の分からない質問である。

 

にも関わらず、この言葉は強烈にぼくの心をザワつかせた。

 

全身からじんわりと汗が出る。

部屋の温度は21度だ。

 

 

この問いは、明らかにぼくの大事ななにかをつついている。

 

混乱しているぼくに追撃がくる。

 

 

「対人恐怖症はなにを守ってくれてるの?」

 

 

考えれば考えるほどぼくは苦しくなった。

 

なぜなら、

 

もしも対人恐怖症がなくなれば、

 

ぼくはまた傷ついてしまうから。

 

 

もう傷つきたくない・・

傷つきたくないんだよ・・

 

 

 

「傷つくのが・・怖いんです・・」

 

 

 

ぼくは泣いていた。

 

別に悲しいわけじゃない。

どこかが痛いわけでもない。

 

でも勝手に涙が溢れてきた。

 

「やっと本音が出たね」

 

 

 

ぼくはただ弱かった。

傷つくことが怖くて、失敗するのが怖くて、嫌われるのが怖くて、傷つきやすい本当の自分を守るために対人恐怖症という盾を作り出していたのだ。

 

「対人恐怖症だからしかたないよね」

これがぼくの安全領域だったのだ。

 

 

講師やらない?

 

「講師やらない?」

 

このクソセミナーはいつもぼくに試練を与えやがる。

 

「対人恐怖症だから・・」はもう使えない。

逃げ口上を失ったぼくは「やらない」とだけ言って逃げた。

 

しかしセミナーに行くたびにこいつらは話しかけてくる。

 

「いつ講師やるの?」

「待ってるよ」

 

こいつらは本当のぼくを知っている。

偽物のぼくが発した声には耳を傾けない。

 

いつも本当のぼくに話しかけて、本当のぼくの声を待っててくれるのだ。

 

 

ちくしょう・・こえーんだよ・・

 

 

 

クラプのコミュ障歴

 

場面緘黙症(3歳頃~12歳頃)

特定の場面で言葉を発せない症状。

幼少期は緘黙児と呼ばれていた。

吃音症(12歳頃~18歳頃)

場面緘黙症が軽くなったあとも吃音があったため、積極的には話さず。

今でも感情的になると「どもり」が出るので無意識で感情を殺すクセが残っている。

対人恐怖症

場面緘黙症患者はその後に対人恐怖症になるケースが多いらしい。

 

 

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